心房中隔欠損症の手術

心臓の右心房と左心房を仕切っている“心房中隔”という壁に孔の開いている病気を、“心房中隔欠損症”と言います。

 

胎児期には赤ちゃんの心房中隔は“卵円孔開存”といって孔が開いているのが普通で、この孔は生後数日の間に閉じるようになっていて、すぐに閉じなくても1cm以下であれば1~2歳まで開いていても自然に閉じることが多いのですが、1歳以上で1cm以上の孔がある場合は自然閉鎖することは殆どなく、体の成長とともに孔も大きくなる場合があるので手術が必要となります。

 

先天性の心疾患の中では非常に頻度の高い病気で、約6割を占めていると言われていますが、これといった症状もなく心雑音も発見しにくいために、幼児期には身落とされがちで、小学校や中学校に入ってからの心電図検査で発見されることが多いようです。

 

正常な心臓では肺で二酸化炭素と酸素とのガス交換を終えた新鮮な血液は、左心房から左心室へと流れて大動脈から全身へと送られますが、“心房中隔”に孔があいていることによって血液が左心房から右心房へと逆流して再び肺に戻ってしまい、全身に送られる血液は不足してしまいます。

 

また肺には通常の何倍もの負担がかかり続けることから、年齢とともに息切れなどの症状がじわじわと現れ始めたり、肺の末梢にうっ血が起こって風邪をひきやすくなったり肺炎を起こしやすくなったりし、体力的にも劣ってくるようになります。

 

実際には50%以上の血液が逆流している場合に手術が必要とされますが、子供の精神的負担も考慮してできるだけ早い時期に手術を行うのが良いと言われています。

大動脈瘤の手術方法

動脈瘤は一旦できてしまうと自然に治癒することはなく、年間で5~10%ずつ大きくなっていくと言われています。

 

また薬物療法にも限界があるために、現在では瘤の大きさが一定以上に達した場合には人工血管に置き換える“人工血管置換術”か、カテーテルを用いてバネ状の金属を取り付けたステントグラフトという人工血管を移植する“ステントグラフト内挿術”か、が標準的な治療法となっています。

 

“人工血管置換術”は、動脈瘤が破裂しないように人工血管に置き換える手術方法で、切開して動脈瘤を切り開き、代わりにポリエステル繊維やフッ化エチレン膜などで作られた人工血管を縫いつけて埋め込むもので、成功すればその部分の再発は殆どないと言われるほど確実な方法です。

 

ただし非常にリスクの高い手術で、中でも胸部大動脈瘤の手術において人工心肺を用いて脳などの重要な臓器へ血液を送っている血管を一旦止める場合には、手術自体はうまくいっても心不全や脳梗塞、腎不全、肺炎といった重篤な合併症が起こる確率が高く、腹部大動脈瘤よりもさらに難しい手術になると言われています。

 

一方“ステントグラフト内挿術”は、動脈瘤ができていない部分の正常な太さの血管にステントグラフトを固定させることによって動脈瘤の内部に血液を流れなくさせるという治療法で、カテーテルを用いて動脈内の動脈瘤の部分に挿入すると金属バネの力と血圧の作用によって血管内壁にぴったりと自然に固定されるために、人工血管を縫いつける“人工血管置換術”よりも体に与える負担はかなり軽減されます。

大動脈瘤について

私たちの体にある大動脈は、心臓から押し出された血液を全身に送るための太い血管で、左心室から胸腔内を通って横隔膜までを“胸部大動脈”、横隔膜から下を“腹部大動脈”と呼ばれていますが、内膜、中膜、外膜という3層で構成されているこの血管の壁が瘤のように膨らんでしまうことがあります。

 

瘤ができてしまう原因は不明ですが、高血圧の人や家族に大動脈瘤の病歴があると出やすいことから遺伝的要素が強いのではないかと言われています。

 

この瘤は“大動脈瘤”と言い、その殆どは血管の弾力性が失われることによって血管が血液の圧力に耐えられなくなって起こるもので、血管壁には何の変化も見られない“真性大動脈瘤”と血管壁に孔があいて膨らむ“仮性大動脈瘤”、そして層になっている壁が2枚に裂けてしまう“解離性大動脈瘤”とがあり、いずれも瘤が破れると大出血を起こしてしまう怖い病気ですが、解離性大動脈瘤以外は初期症状がないために定期健診の胸部X線検査で偶然に発見されるケースが多いようです。

 

胸部大動脈の径は正常な人で約2.5cm、腹部大動脈の径は約1.5~2cmと言われ、いずれもこれが拡大して2倍以上になると破裂の危険性が高まるために手術による治療が必要となります。

 

大動脈瘤の手術には、“人工血管置換術”と“ステントグラフト内挿術”という人工血管を使ったカテーテル治療とがありますが、医療技術が進歩した現在でも“大動脈瘤”の手術は非常にリスクの高い手術の1つで、成功率は90%程度とも言われ、これが破裂が起こってからの緊急手術となると成功率は60~80%程度に落ちてしまいます。

狭心症・心筋梗塞の手術≪冠状動脈バイパス手術≫

心臓に酸素や栄養を送っている“冠動脈”は1日に10万回も休まずに働き続けている血管で、左冠動脈と右冠動脈戸に分かれ、左冠動脈はさらに前下行枝と回旋枝とにわかれています。

 

この冠動脈に動脈硬化が起きて狭くなって狭心症がおこり、さらに進行して完全に血管が詰まってしまうと心筋梗塞という命にかかわる恐ろしい病気を引き起こすために、薬物療法で改善が望めない場合には手術が行われます。

 

狭心症や心筋梗塞の手術には、心臓カテーテル治療の他に“冠状動脈バイパス手術”というのがあります。

 

この手術は何カ所も詰まっていたり、カテーテルを入れにくい部分がつまっていたり、閉塞部分までカテーテルを到達させることができなかったりする際に行われるもので、全身麻酔を行って胸の前の皮膚を20cm程度切って、さらに胸骨を縦に切って開胸し、詰まったりせまくなったりしている冠動脈の先に“グラフト”と呼ばれる別の血管を針と糸で縫い合わせてつなげて冠動脈に迂回路をつくり、心臓への正常な血液の流れを取り戻していきます。

 

成功すれば1回の手術で治すことができますが、場合によっては出血や心不全、脳梗塞、腎不全、肺炎などを引き起こすこともあるために、この手術は症状が重いけれども比較的若くて体力のあるという患者に行われることが多いようです。

 

また、かつては人工心肺を使って心臓を一時的に止めて行っていましたが、最近では心臓を自然に拍動させたままで行う“オフポンプバイパス手術”によって、脳梗塞や出血、感染症などの合併症が減って安全性がかなり高まっていると言われています。

狭心症・心筋梗塞の手術≪カテーテル治療≫

“心筋梗塞”は心筋に酸素を供給する冠状動脈が完全に詰まって血液が流れなくなることによって心筋の細胞に壊死を引き起こす病気で、一旦壊死してしまうと細胞は元には戻りませんし治療が遅くなってしまうと死亡率が高くなってしまうために、一秒でも早く処置を行って血液の流れを取り戻さなければなりません。

 

また“狭心症”は、冠状動脈が完全には詰まっていないものの狭くなって心筋に送られる酸素や栄養の量が少なくなっているために、放置して悪化させると心筋梗塞を発症しやすくなってしまいます。

 

狭心症の治療や手術は、心筋梗塞の治療や手術と殆ど同じですが、手術にはカテーテルを使った冠動脈の形成術と、開胸して行う冠動脈バイパス手術とがあります。

 

カテーテルを使った冠動脈の形成術では、手首や足の付け根などの動脈からカテーテルを入れて冠動脈内の狭窄部分を拡げる処置が行われ、そこでは先端部分に風船をつけたカテーテルを挿入して狭窄部分で膨らませる“風船治療”や、カテーテルを使ってステンレスなどの金属でできた編み目状の筒を狭窄部分に入れて膨らませる“ステント治療”があります。

 

風船治療とステント治療とは似ていますが、“風船治療”の方が膨らませたあとすぐにバルーンを取り出すのに対して、“ステント治療”ではステントはそのまま血管内に残されるために治療効果はより高く、狭窄部分が再び元の状態に戻ってしまうことも少ないと言われています。

 

またステント治療の効果をさらに高めるために、薬を塗布したステントを埋め込む“薬剤ステント治療”が行われることもあります。

弁膜症の手術≪僧帽弁≫

心臓にある4つの弁の1つ僧帽弁は、正式には左房弁と言われるもので左心房と左心室の間にあるもので、この弁に異常が起こって発症する病気に“僧帽弁狭窄症”や“僧帽弁閉鎖不全症”があります。

 

まず“僧帽弁狭窄症”は僧帽弁が十分に開かなくなる病気で、左心房から左心室へ向かう血流が阻まれることによって左心房に血液がたまって血栓ができやすくなり、肺にも水がたまって心不全が起こりやすい状態になります。

 

 

“僧帽弁閉鎖不全症”は僧帽弁が閉じ切らないために、左心室から左心房へ血液が逆流する病気で、かつてはリュウマチが原因で僧帽弁の病気が引き起こされることが多かったのですが、最近では抗生物質が進歩したために著しく減少し、代わりに弁そのものが弱くなって逆流を起こす僧帽弁閉鎖不全症が多くなってきたと言われています。

 

血液を十分に送ろうとして心臓が拡大し、限界の状態になったときに動悸や息切れやせき、呼吸困難といった症状が現れることもありますが、慢性化している場合は逆流の程度が大きくても自覚症状を伴わないこともあるようです。

 

僧帽弁の手術では、殆どの場合自分の弁を取らずに悪い部分だけを修復する“弁形成術”が行われます。

 

この手術は、内服薬を併用しながら弁の周囲にリングなどを取り付けたり、切って形を整えて縫い合わせたりするもので、弁を新たに付け換える“弁置換術”と比較すると術後に感染症や血栓症を発症するリスクが低いと言われています。

弁膜症の手術≪大動脈弁≫

大動脈弁というのは心臓から全身に血液を送り出す際の最後の部分にある弁で、この弁の病気で代表的なものに“大動脈弁狭窄症”や“大動脈弁閉鎖不全症”があります。

 

まず“大動脈弁狭窄症”は、リュウマチ熱や動脈硬化などによって弁の石灰化が進んで全身の血流が悪くなってしまう病気で、大動脈弁が十分に開かないために、左心室から大動脈へ向かう血流が阻まれてスムーズに流れなくなり、左心室にかかる負担が大きくなって心筋が肥大して壁が厚くなります。

 

次に、“大動脈弁閉鎖不全症”は大動脈弁が完全に閉じないために、大動脈へ送られた血液が左心室へと逆流してしまい心肥大を起こし、さらに進行すると心不全が起こりやすい状態になります。

 

これらの病気は長期間無症状のままで徐々に進行していくことが多く、重症化すると心不全や失神、狭心症などの症状が出ますが、放置しておく期間が長くなればなるほど肥大化は進み、手術の危険率が高くなりますし大動脈へ送りだされる血液の量も少なくなるために、心臓の筋肉へ十分な酸素がいきわたらなくなって最悪の場合突然死を招くこともあります。

 

そこで早めに治療を開始する必要がありますが、いずれも大動脈弁の形や動きに問題があるのが原因であるために、根本的に解決するには肺のうっ血を軽減したり血管を拡張させる薬による内科的治療ではなくて弁の手術が適切であると言われています。

 

“大動脈弁”の手術は、弁の不良個所を修復する“弁形成術”と、新たな弁に取り換える“弁置換術”とがありますが、弁形成術で治癒させることは難しいことから殆どの場合弁置換術が行われます。

弁膜症について

心臓には三尖弁(右心房室弁)、肺動脈弁、僧帽弁(左房室弁)、大動脈弁という4つの弁があって血液が逆流するのを防ぐ働きをしています。

 

ところが、心臓の弁の機能に問題が起きて弁の開きが悪くなり血液が流れにくくなると“狭窄”が起こったり、弁が完全に閉じなくなると血液が逆流する“閉鎖不全”という状態になったり、さらにこれらの症状が同時に起こっていることもあります。

 

このような状態を“弁膜症”と言い、弁の病気はじわじわと進行していくために人によっては自覚症状が出ないこともありますが、一般にはちょっと動いただけでも疲れやすかったり、動悸や息切れ、胸の痛み、呼吸困難といった症状を伴うと言われています。

 

弁膜症は心臓の弁の中でも特に“大動脈弁”と“僧帽弁”に起こりやすく、原因としては先天性のものと、リュウマチ熱や動脈硬化、心筋梗塞の後遺症など後天性のものがありますが、近年は高齢化にともなって “大動脈弁狭窄症”や“大動脈閉鎖不全症”、“僧帽弁狭窄症”、“僧帽弁閉鎖不全症”も増えていると言われています。

 

内科的治療では、肺うっ血を軽減するために利尿剤を用いたり、心臓の負担を軽減するために血管を拡げる薬などが処方されますが、弁膜症は自然治癒することはないので定期的な検査を行って病状を管理します。

 

また外科的治療では、問題のある弁を切除して新たに人工弁をつけたり、弁の悪い部分だけを修復する手術が行われます。

 

弁自体は小さなものですが、弁の異常を放置しておくと心臓を動かしている筋肉まで異常が起こって心不全や突然死につながることもあるので、日常生活に変化を感じたら早めに医師に診てもらうようにしましょう。

セカンドオピニオンについて

“セカンドオピニオン”とは、患者が治療に関してよりよい決断をすることを目的としているもので、「担当の医師の診断が正しいか」とか、「主治医にすすめられた手術が適切なものであるか」、あるいは「他にもっといい治療法はないか」など、患者が治療法に関して少しでも不安をいだいている場合には、主治医以外の他の病院の医師の意見を聞いて参考にするというものです。

 

「主治医のことを信用していないみたいで、失礼になるのではないか」と思われる方もいるでしょうが、特にガンや心臓病といった治療法が日に日に進歩している分野では、現場の医師たちでさえセカンドオピニオンを必要とすることが多いようですので、理解して納得し、同意するという“インフォームドコンセント”の概念が普及した現代では、その過程で専門知識をもたない一般の患者が不安を覚えたり、もっと多くの専門家の意見を聞きたいと思うのはごく自然なことだと考えられています。

 

実際に日本でも、大きい病院には“セカンドオピニオン外来”というのがあります。

 

これを利用するには、最初の病院から病気の経過に関する情報提供書類や検査資料をもらってセカンドオピニオンをお願いする病院へ持って行き、「○○病院でこのように言われたのですが、セカンドオピニオンをお願いします」と言えば受け付けてもらえますが、ここでは検査や治療といった診療は行われず、相談だけになるので健康保険給付の対象とはならず費用は全額負担しなければなりません。

 

一般外来での保険診療を希望する場合は再度検査をしてもらうことになりますが、その際にも、これまでの経過が記録された資料があった方がより正確な診断につながるようです。

インフォームドコンセントについて

“インフォームドコンセント”とは、患者が医師と同じレベルで病気に対する情報を得た上で理解・納得・合意という段階を経て行われます。

 

手術などに際しても医師が患者の意思や権利を無視した医療行為に走らないように、治療を開始する前に「病名はどういうもので、今の時点での病状はどうなのか」、「可能な治療法にはどのようなものがあるか」、「それぞれの治療法にはどのような効果が期待でき、同時にどのような副作用や危険性、問題点などがあるか」、「治癒する確率はどのくらいあるのか」、「治療を行わなかった場合に予想される結果」などに関して、分かりやすい言葉で患者本人にすべてを伝えることが基本となっています。

 

患者はその情報をもとに、どのような治療をしたりどのような手術をするか等を自分の意思で選択し、医師は患者が医師の勧める治療法以外の方法を選択した場合にはそれに応じた治療を進めて行くことになります。

 

“インフォームドコンセント”の概念が浸透してきた現在では、医師と患者との信頼関係が築かれることによってより効率のよい治療が行われることが可能になってきましたが、一方で患者が与えられた医療情報をどの程度理解できるか、さらには医師が患者にどれだけ内容を理解させることができるかということの重要性が高まってきています。

 

また、インフォームドコンセントでは患者に正しく理解してもらうためにガンなどの難しい疾患の場合でも告知しなければなりませんが、それによって病気と闘う意欲をなくして

しまうこともあるなど、問題点も多く残されています。